卒論生に読んでほしいwebサイト5選
This article is mainly for Japanese undergraduate students.
こんにちは! もう学部四年生が研究室に配属されましたね。
はじめての研究、どうしたら良いのか分からない。そんな卒論生に向けて、「お前ら研究ってのはこうやるんだぜ」的なtipsブログを書いて先輩面してやろうかなと思いました。
が、ネット上には既に良質な経験談・コツ・ハウツーがたくさん公開されてます。なので、自分で新しく書くよりネットのお薦めサイトを紹介した方が有益かも…、と考え直し、この記事ではそんな良質サイトの紹介をしたいと思います! 流行り(?)のキュレーションですね。
もくじ
1. 卒論を始めるにあたっての心構え
2. 論文の読み方
3. 進捗報告のやり方
4. 発表に向けて
5. お薦めの書籍
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NGS現場の会に参加してきました
今週、仙台で開かれたNGS現場の会第五回研究会に参加してきました。いやはや、めっちゃ楽しかったです。
I attended NGS Field Meeting held in Sendai this week.
●NGSとは
NGSとは、Next Generation Sequencer (もしくはSequencing; 次世代シーケンサー)の略で、2000年代に登場したDNA塩基配列を高速で読む機械・技術のことです。
登場して10年以上も経って今更「次世代」もないだろということで、略称のNGSだけを研究会の名前に使ったのだとか。
●ポスター発表しました
私はまだまだNGS初心者中の初心者で、主に勉強のために参加したのですが、せっかくなのでポスター発表もしてきました。ゲノム配列がほぼ知られていないヨコエビのcDNA配列一部を、NGSによって読んだというものです。
My poster presentatin was about de novo transcriptome analysis of a non-model amphipod.
●ナノポアシーケンサー
今回いちばん盛り上がってたのは、やはりOxford Nanopore TechnologiesのNGSでしょう。特にMinIONというシーケンサー。
手のひらサイズで、立派なラボのない途上国でも宇宙船でもシーケンス可能。数十kbのロングリードを読める。準備からシーケンス結果の閲覧まで早くて1時間ほど*1。さらにcDNAでなく、RNAをダイレクトにシーケンスできる。スゴい…。
ネックだったaccuracyも改善して、既に95%を超えたとか。まだIlluminaなどのショートリードシーケンサーのaccuracyには届きませんが、もう少し待てば…?
大げさですが、新しい時代が来てるなと本当に感じましたね。私も早く使おうと画策中です*2!
●他にも色々な企画が
現場の会というだけあって口頭発表と同時進行でシーケンスをしたり、ゲノム解読中の里芋を使った芋煮がでたり、と面白い企画が色々ありました。
K. Hiki
Paper published in EES (Hiki et al., 2017)
論文がEcotoxicology and Environmental Safety誌でpublishされました!
Hiki K., Nakajima F., and Tobino, T., 2017, Application of cDNA-AFLP to biomarker exploration in a non-model species Grandidierella japonica, Ecotoxicol. Environ. Saf., 140, 206-213. DOIのリンク
cDNA-AFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)というmRNAのプロファイリング手法を有害物質のバイオマーカー探索に適用した論文です。
Farewell party (2016 Winter)
先日、博士課程のWilailuk Niyommaneeratさん(Kaeさん)の送別会を開きました!
OB・OGも、忙しいなか参加してくれました。
We had a farewell party for Dr. Wilailuk Niyommaneerat.
▲後光がさしている山本先生
Kaeさん、修了おめでとうございます。
送別会でKaeさんがあいさつしている間、日本に来てからもう3年以上経ったのかと色々思い出して、ちょっとうるっと来てしまいました…。タイに帰ってもお元気で!
K. HIKI
3月にあったこと色々
こんにちは、日置です。3月は学内の集まりが少ない代わりに、色々なイベントがありました。
●大掃除
先日実験室の大掃除でした。
棚の中から古い試薬類がたくさん見つかりました!
We did laboratory cleaning on 10th March.
●学会参加!
都市工学科の多くの人が水環境学会年会@熊本に参加しているとき、私は生態学会@早稲田大学に参加していました。といっても発表せず、話を聞きに行っただけですが面白かったです!
数年前くらいから流行っている環境DNAと因果推論あたりの発表を聞きまくりでした。両方とも、手法を検討する段階から既に実用的な段階に移っているという印象でした。
I attended annual meeting of ecological society of Japan held at Waseda University. There were many presentations on environmental DNA and causal inference.
●干潟でヨコエビ採り
ふなばし三番瀬海浜公園の干潟にヨコエビを採りに行きました。プライベートで。本郷キャンパスから1時間くらいで電車+バスで行けます。ただバスの本数が少ないので要注意。
I went to tidal flats at Sanbanze to collect amphipods.
落ちているアオサを水で洗うと、ヨコエビがわんさか現れます。宝さがしみたいで楽しいです。
しかし、探せど探せど多毛類(ゴカイみたいなやつ)ばかり…。30分くらいいたのですが、ヨコエビは1匹も見つかりませんでした。残念。
要調査項目について
こんばんは。
書きますと言い続けて気づいたら年をまたいでいました。さわのいです。
ここに書くのは初めてです。よろしくお願いします。
I'm Sawanoi. This is the first time for me to write this blog!
先月参加した学会(環境工学研究フォーラム@北九州)のことを書こうと思っていて、原稿をスマホのメモ帳にメモってたんですが。。。1ヶ月以上も経ってしまったので別のことを書こうかなと思います。
ちなみにメモ帳のその部分の最終更新日は2016/12/8となっていました。。笑
ということで今日書くのは、最近ちまちまやってたちょっとした調査結果についてです。
何かというと、「要調査項目に関する毒性試験値がどのぐらい集まってるか調べてみよう」、というものです。
環境省が定める水生生物保全のための環境基準に関して、今後毒性試験データ収集してや!という「要調査項目」というのがあります。
その要調査項目に関して、実際今どんぐらい毒性試験データ集まっとんや?というのを調べてみようや。そしたらいろんな現状が見えてくるんちゃうか?というのが目的です。(一部関西弁なのは高校の大先輩でもある日置さんのスタイルを踏襲しています)
Today I talk about “how many toxicity data have been obtained for the preservation for aquatic organisms in Japan”.
調査方法としては、
・要調査項目のリスト(2014年改訂版)をゲット。
環境省_「水環境保全に向けた取組のための要調査項目リスト」の改訂について(お知らせ)
・そのリストに載っている物質のCAS番号を調べ、その番号をECOTOXという毒性試験値をまとめたデータベースで検索。ついでにPubchemというデータベースでその物質のlogKowも調べて底質へのたまりやすさを評価。
・主に藻類、甲殻類、魚類、底生生物(甲殻類、虫など)に関する毒性試験値の有無、値があるなら生物種や試験日数、endpoint、実際の毒性値などを記録。
(実際は大量のデータがあるので、あればstandard speciesから、なければそれ以外から抜粋。特に甲殻類と底生生物に関しては、急性/慢性 (短期/長期・個体影響/個体群影響)の両方があれば記録し、なければどちらか一方のみ)
※底生生物に関してはECOTOX上で明確に示されていないので、生物名でググって底生生物らしければ底生生物ということでまとめました。本来なら元論文まで戻るべきですが、今回はこのぐらいの精度で調査したということで。。。
と、いう感じです。ざっくりいうと。
↑調査状況こんな感じです。 序盤は色々試行錯誤していたのでミスが多い気もします。。
さて、結果を簡単にまとめると以下のようになります。
・要調査項目全105項目のうち、毒性試験データがあったのが、
藻類66 甲殻類72 魚類75 底生生物59
・さらに甲殻類と底生生物について、慢性毒性値があった項目が、
甲殻類31 底生生物11
・全105項目のうちlogKow>3の物質は47項目あり、そのうち底生生物の毒性試験データが無かったものが24項目
(logKow>3という閾値には特に根拠はありません、とりあえず大きいものを区別したかっただけです。。)
こんな感じでした。
底質毒性に関して、データ収集が他より多少遅れていること、特に慢性毒性値が甲殻類の1/3程度しか集まっていないというのは底質の慢性毒性試験をやる意義とかについて今後色々使えそうですね。
logKowに関しては、優先すべき物質があるよ、というぐらいでしょうか。
あと(これは先生に言われてなるほどと思ったのですが)、Daphnia類が猛威を振るって?いそうな甲殻類でも1/3の物質がデータ無しというのは少し意外な結果でした。
たまたまこれの話を準備室でしていたら某先輩に「それブログで書いてよ!」と言われたので書いてみました。個人的には色々と使えそうな結果だなと思っております。
ただ、リストに載っている物質で「~塩」とか「~類」みたいなのはそれに含まれる物質一つのみ抜粋して調べていますし、前述のように元々の論文までは目を通していませんし、見直しみたいなこともしていないので信頼性は微妙です。今後より精査する可能性もありますが、現段階では参考程度、ということですかね。
以上です。
さわのい
Our work was accepted by Chemosphere!
論文がChemosphereにアクセプトされました!
Kyoshiro Hiki, Fumiyuki Nakajima and Tomohiro Tobino: Causes of highway road dust toxicity to an estuarine amphipod: Evaluating the effects of nicotine, Chemosphere, in press. [DOI←Link]
●何についての論文?
ざっくり言うと、「道路表面にある塵は色んな有害物質を含んでいて、雨によって流されて底生生物に悪影響を及ぼす恐れがある。塵に含まれる金属類やニコチンに着目し、悪影響を生じさせる原因物質を突き止めようとした(けど結局良く分からなかった)。」という論文です。
This paper is about the toxicity of road dust deposited on road surface to a benthic organisms. In this paper, we analyzed metals and nicotine as causative toxicants in road dust.
もうちょっと詳しく背景を書いてみます。
道路表面には、自動車の排気ガスや建築活動、舗装などから発生する塵など(road dust, 道路塵埃)がたまっています。これらの塵は、金属類や多環芳香族炭化水素など高濃度の曝露で有害となりうる化学物質を多く含んでいることが知られています。
道路にたまっている塵の一部は、雨によって流されて、河や海の底に蓄積します。すると、河や海の底に生息している底生生物は、塵に含まれる有害物質に曝露されます。結果、底生生物は成長や繁殖が阻害されるとか、あるいは死亡してしまうとか、良からぬ影響を受けてしまうのではないかと、懸念されています。
「(上に書いた)金属類や多環芳香族多環水素は悪者なんやで~」「塵や塵を含む排水にこんだけ含まれとるで~」みたいな論調の論文や報告は数多く見られます。しかし、実際に生物を用いて、これらの物質が環境試料(塵や塵を含む排水など)においてどれだけ有害なのかを評価した研究はそう多くはありません。
そこで私たちのグループでは、「実際どれだけ有害やねん」「有害である原因はホンマに金属類なんか?」ということで*1、道路表面の塵を集め、それをカイミジンコやヨコエビといった底生生物に曝露させて、塵に含まれるどのような物質が毒性影響を生じさせているのかを調べる研究をおこなってきました(例えばWatanabe et al., 2013; Khanal et al., 2015)。今回の論文も、その流れの中にあります。
どのような手法を用いたか、結局何が分かったか、などのさらに詳しい説明は、ぜひ論文をどうぞ!
今年9月におこなった学会発表の内容が、今回の論文と重なる部分もあるので、その口頭発表のスライド(下)を見てもらえると、今回の論文の内容がかなり分かると思います。
Here is a slide for an oral presentation in the domestic conference held in Ehime University. The contents of this slide were similar to that of the paper.
●ひとりQ&A
論文には書けなかったけれど、学会発表や査読で突っ込まれがちな点を補足しておきます。
Q1.
汽水産の生物を使ってるけど、道路塵埃は汽水域まで流れ着くの?
A1.
多くの大都市は沿岸域に立地しているので、道路塵埃が汽水域に排出されることは珍しくないはずです。例えば東京では、首都高が沿岸域の水上にかかっています。Google mapでご確認ください。また河川であっても、例えば隅田川の下流では塩分が2%まで上昇することもあります。
Q2.
道路塵埃は、実際の環境では泥によって希釈されるから、生物に影響はないのでは?
A2.
まず実際の底質環境における道路塵埃の割合を考えてみましょう。ベンゾチアゾール類をマーカーに用いたKumata et al. (2002, EST) によると、底質粒子の0.8~6.8%は道路塵埃由来と推定できるそうです。塵埃の割合は15.5% w/wにも達するという報告もあります*2(Wik and Dave, 2009,Environ. Pollut.)。
一方、今回の論文で求めた道路塵埃のLC20(Lethal Concentration 20)は最大で4.7%でした。LC20は試験個体のうち20%が死亡する濃度を示してます。100匹で試験した際、20匹が死亡する濃度ですね。この影響のレベルにどれくらい意味があるのか、はちょっと簡単に答えを出せないので、「影響がないわけではなさそうだ」という玉虫色の官僚的答弁で逃げたいと思います。
とにかくLC20値である4.7%は、先ほど示した環境中濃度6.8%よりも低いです。つまり今回の実験結果においては、「実際に生じうる濃度の道路塵埃汚染によってヨコエビの致死率に影響が出た」 わけです。
ただ、雨によって流出する過程での有害物質の変化を考慮してないじゃないか、とか道路塵埃を希釈するために石英砂を使っているので泥分が多い環境での影響は模擬できてないぞ、とか言われると全くその通りです。今回の結果は、毒性が大きくなるような条件で得られたものかもしれません。
Q3.
タバコ吸い殻由来のニコチンなんて、局所的な現象では? 普遍的なものではないでしょ。
A3.
確かに全ての道路にタバコの吸い殻が一定量落ちている、なんてことはないでしょう。最近は禁煙区域も多いですし。
ただ、雨が降った時は路面排水中のニコチン濃度が高くなる現象は、いくつか報告例があることだけ示しておきたいと思います。例えばアメリカ(Benotti and Brownawell, 2007)やイタリア(Senta et al., 2015)です。
「で、何が分かったの?」と言われると正直ぱっとしない論文ですが、論文を仕上げる過程では、有害物質のbioavailabilityやSediment TIEの考え方、パルス曝露などについて、かなり勉強できました。結構楽しかったです。論文を見てくれた査読者(計10人ぐらい)、アドバイスを下さった方々に感謝です!